木造でつながる社会、広がる世界

木の建築は人との距離が近い

 木造のよいところは、明確に分業されているS造やRC造とは異なり、 基本的に大工さんが多くの工程にかかわること。〝つくり手の顔が見える建築〟であるともいえます。また、 木は現場で加工しやすく、細かい調整や変更にも対応できるので、設計者としてとても心強く思います。

 でも、何といっても、木は直感的に気持ちのよいもの。少々乱暴な言い方ですが、建築に木を使っていやな気持ちになる人はいないでしょう。 それを私なりに分析してみると、建築と人との距離感なのだと思います。 RC造やS造に比べて、木造は人が親しみを感じやすい。建築に身を預けて心地よいのは木造です。

 それは世界共通かもしれません。 私の好きなフィンランドの建築もそのようにつくられています。彼らは建築のどこかに木を使います。たとえ木造でなくても、家具や造作材には木を使う。そうすることで、建築と人の距離をより近づけているのです。 
 こうした哲学は、リオタデザインの仕事にも生きています。建築のすべてを木で構成してしまうと木が主張しすぎてしまうので、空間の余白に木をバランスよく配置することを心がけています。たとえば外廻り。 外装は板金や吹付け塗装などとすることが多いのですが、塀や外壁の一部に木を使うことで、人を快くもてなす設えとしています。

 また、木は多種多様。樹種による違いはもちろん、産地によっても異なる表情を見せてくれるので、木の選定には心を配ります。基本的には、 木目が主張しすぎないものを主役に。 面材にはラワン合板よりシナ合板を多用しています。一方、線材(構造) にはある程度木目がはっきりしたものを使うこともあります。面材との組み合わせによって、ほどよいコントラストが生まれるからです。具体的には、スギやヒノキ、ヒバなどを使用することが多いです。
室内から延びる西川材の垂木が目を引く軒天井。普遍的な木造在来軸組構法の骨組を軽やかに見せる設えは、リオタデザインの真骨頂

構造材の産地は建物の付加価値

コーナー窓で、現しにした西川材の柱(120㎜角)に手をかける関本竜太氏。「節がなく、木目がきれいなので、思わず手で触れたくなります。木造は人間との距離が近い、というのがいいですね」(関本氏)
 木造で計画するならば、やはり構造を見せたいという根源的な欲求があります。建物にかかる力の流れが明快に表れ、嘘偽りのない正直な姿となって立ち現れてくるからです。リオタデザインの定番となっているのが垂木や屋根の構造を現しとするデザインです。

 化粧材は、予算の関係もあり、ディメンションランバー(ツーバイ材)や集成材などをよく用います。製材や無垢材にこだわっているわけでは必ずしもありません。それは、 フィンランドでの留学経験も大きく影響しているのだと思います。彼らにはいい意味で〝無垢信仰〟がなく、集成材と製材とを等価なものとして扱います。集成材でも、その特徴を建築のデザインとしてうまく生かすのです。森林資源を大切にしているともいえるでしょう。

 しかし、私がこれまで使ってきた材の多くは輸入材。加えて、負担がかかる梁材はヤング係数(E)が高いベイマツを指定しがちで、これまで、国産の製材のみを用いて木造をつくる機会はありませんでした。多くの設計者と同様に、木への愛着はありながらも、その根幹である構造材の産地には無頓着だったのです。
 しかし、私は幸運にも伊礼智さんや古川泰司さん、山田憲明さんなど、国産の構造材にこだわりをもつ設計者とのつながりがあり、建築に取り組む彼らの姿を見てきました。 そのことも手伝って、国産材を使うことに対する意識はより強いものになっていきました。

 それが、ようやく形になったのが  「普光明寺寺務棟」(埼玉県新座市)です。建立から1千年以上も経つお寺で、山門は市の有形文化財にも指定されています。当然、建築時には、 地場の埼玉(旧武蔵国)に生育する木を使用したに違いありません。その歴史に敬意を表しつつ、街の資産の一部としてこの建物が末永く根付いてほしいという願いから、必然的に埼玉県産材を使用しました。

 構造材は、金子製材(埼玉県)の製材を指定。理由は、JAS構造材(機械等級区分構造用製材)として、ヤング係数や含水率、寸法といった性能が明確に表示されているからです。 なかでも、ヤング係数は重要でした。 私は、山田憲明さんが書かれた『ヤマダの木構造』(エクスナレッジ)に記載されているオリジナルのスパン表をよく利用しているのですが、そこには一般的なスパン表とは異なり、 樹種に加え、ヤング係数ごとにスパンに応じた梁成の寸法が記載されています。なので、単にスギの製材を指定するのではなく、ヤング係数などの性能が明確に表示された材を使う必要があったのです。
 こうした実績が大きな安心感を生み、今後の家づくりなどでも国産材を使いたいと考える建築主は増えるでしょうね。個人的には、スギの木目を見るとやはり懐かしい感じがします。生産者の顔が見える木材だというのもいい。木造を通して、人と地域社会が〝数珠つなぎ〟のように重なり合い、密な世界をかたちづくる、とでもいいましょうか。

 ただし、国産の製材のみにこだわる必要はないとも考えています。スギは確かに、ヤング係数がやや低い。 ならば、スギとベイマツのラミナを重ね合わせたハイブリッドの集成材を部分的に採用するのも1つの手段でしょう。国産材を軸に据えながら、 輸入材もうまく組み合わせて使っていく。それが木の建築ならではの多様性であり、フィンランドで建築を学んだ私らしい建築のつくり方ではないか、と考えています。

スギ製材の垂木(45×105㎜・303㎜ピッチ)を現しにした「普光明寺寺務棟」。スギ製材には、江戸城にも利用されるなど古くから優良木材として知られる西川材(埼玉県南西部産)を利用している。天井は熊野産(三重県)のスギ小幅板仕上げ
 こうした実績が大きな安心感を生み、今後の家づくりなどでも国産材を使いたいと考える建築主は増えるでしょうね。個人的には、スギの木目を見るとやはり懐かしい感じがします。生産者の顔が見える木材だというのもいい。木造を通して、人と地域社会が〝数珠つなぎ〟のように重なり合い、密な世界をかたちづくる、とでもいいましょうか。

 ただし、国産の製材のみにこだわる必要はないとも考えています。スギは確かに、ヤング係数がやや低い。 ならば、スギとベイマツのラミナを重ね合わせたハイブリッドの集成材を部分的に採用するのも1つの手段でしょう。国産材を軸に据えながら、 輸入材もうまく組み合わせて使っていく。それが木の建築ならではの多様性であり、フィンランドで建築を学んだ私らしい建築のつくり方ではないか、と考えています。
関本竜太[せきもと・りょうた]/リオタデザイン
1971年埼玉県生まれ。’94年日本大学理工学部建築学科卒業。’94年~99年エーディーネットワーク建築研究所。2000年~’01年フィンランド ヘルシンキ工科大学(現アールト大学) 留学、現地の設計事務所でプロジェクトにかかわる。’02年リオタデザイン設立。北欧建築・デザイン協会(SADI)理事。主著に『上質に暮らす おもてなし住宅のつくり方』(エクスナレッジ)がある

(写真=山内拓也)

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